甲状腺ひとつ取ってみた

甲状腺腫の手術と入院生活などの記録

現段階での傷跡

甲状腺腫の手術となると、傷跡がどうなるのか気になる方も多いと思う。

かくいう私も手術前はもう年も年だし、多少の傷跡ぐらいは……と思っていたのだが、いざ手術してみると結構目立つ場所に傷ができたことに改めて気がついた(遅い)。首の辺りってちょうど視線がいきがちなんですよね。

なので今回は記録として、手術後の傷跡の写真をお見せしたいと思う。苦手な方はご覧にならない方がよろしいかと。

まずは手術翌日の写真から。

 

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こうして見ると結構「首と胴体つなぎ合わせた」感があるな……。上に貼ってあるテープは退院まで1週間弱貼りっぱなしだったが特にかぶれたりはなし。むしろドレーンを貼りつけていた箇所がかゆくて嫌だった。では続いて術後5日目、退院当日の写真。

 

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首のドレーンを抜いたら、術後貼っていたテープから傷跡保護用のテープに交換する。テープの上からは傷はほとんど見えない。それでは最後に手術から3週間弱たった傷跡の写真ですが、こちらはテープなしなのでご注意ください。

 

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若干V字っぽく写っているものの、実際の傷はほぼまっすぐ。主治医によると「まだ傷がむくんでいる状態だけど、これは3~4か月くらいで落ち着いてくる」とのこと。手術直後に比べたら、だいぶ縫い合わせました感は減ってきたのではないだろうか。

ちなみに普段はアトファインという保護テープを貼っている。これは主治医から指定されたもので、傷を治すというよりは紫外線や物理的刺激から傷跡を保護するものだそう。貼ったまま入浴OKで、私は1週間に1回ペースで貼りかえている。肌トラブルなどがなければ、少なくとも3か月は使うのがおすすめだそうだ。ネットでも購入可。

 

 

甲状腺腫、摘出後の痛み

はじめにお断りしておきたいのだが、痛みの感じ方というのはとかく個人差が大きい。ある人がものすごく痛いと感じても、別の人はそれほどだったりということはよくある。なのでこれから書くことは、あくまで私の個人的な感想であって、全ての人に当てはまるわけでは決してない。こういう人もいるんだな、ぐらいの感じでおつきあいください。ちなみに私は自他共に認める痛みに強いタイプです。

ということで摘出後の痛みだが、まず手術直後。ICUでは痛みというより首から胸の辺りにかけて重だるいような感じがした。足のほうに向かって力をかけて引っ張られているような。たとえるなら筋肉痛に近い。主治医によると「手術で筋肉もいじってるからそう感じてもおかしくない」とのこと。

また、ものを飲み込むのにやや苦労した。扁桃腺が腫れたときのような痛みがするのだ。しかしこれは2、3日たつと気にならない程度まで回復した。

気になったのは首からあごにかけての違和感だ。洗顔のとき顔に触れると、特に腫瘍のあった左側の感覚がおかしい。歯を抜くときに麻酔を打つと、しばらくしびれた感じが続くことがあるが、それが広範囲にわたっている感じ。触っても何か直接皮膚に触れていないような気がして、どうにも気持ち悪い。これは入院中には回復せず、手術後2週間ぐらいたってようやく少しよくなってきたかな……ぐらい。

手術部位の違和感については2~3か月程度続くと聞いていたので、長い目で見ていこうと思っている。その上でいつもと違うな、みたいなことがあったら念のため受診するつもり。

そして違和感が和らいできたと思ったら、今度は逆に傷の痛みを少し感じるようになった。具体的に言うと、シャワーを患部に当てると痛む。とはいえ痛いと感じるのはシャワーのように何か傷に当たった時ぐらいで、普段は痛みを感じることはまずない。

まとめると私の場合、痛みというより違和感のほうが気になっている。少なくとも痛くて我慢できないということはない。しつこいようだが個人差があるので、あくまで私の場合は、ということです。

摘出した甲状腺腫、どんな感じ?

いまだに後悔していることがある。摘出した甲状腺腫をこの目で見られなかったことだ。

手術前、執刀医に頼むのを忘れてしまったので、夫から言ってもらおうと思っていた。しかしそれもすっかり忘れて、部屋を変えてくれと頼んだという……つくづく年は取りたくないものです。

ということで、実際に摘出した甲状腺腫を目撃した夫に、どんな感じだったか聞いてみた。

・まず思ったのは「よくこんな大きいのが入ってたな」ということ。それと同時に「こんなに大きいなら取ってよかったな」と感じた

・大きさはにわとりの卵ぐらい。どれが甲状腺でどれが腫瘍かの区別はつかなかった

・見た目はレバーみたいな感じ。血まみれで、もともとはどんな色だったのかはわからなかった

・手術の説明を受けたときに甲状腺の模型を見せてもらって「甲状腺は蝶ネクタイみたいな感じ」と言われたが、それとは似ても似つかなかった

だそうです。夫も私が見たがることを予想して写真を撮ろうと思っていたそうなのだが、ICUに入る前に荷物を預けさせられたので無理だったとのこと。

後日手術後の検診に行った時、もしかしたら写真だけでも見せてもらえるかと期待していたのだが、結局それもかなわなかった。返す返すも残念である。

甲状腺腫に限らず、摘出手術後の腫瘍が見たい! という方は、手術前に主治医に相談しておくことをおすすめする。何を言っているんだか。

入院7日目、退院当日

月曜の明け方、止まらない絶叫に耐えかねて部屋を出た。たまたま居合わせた看護師さんにどこか別の場所で休めないか聞いたところ、食堂を使っていいという。この病院は本来食堂で食事が取れるようなのだが、コロナ禍で今は使われていない。

トボトボと食堂に向かう。朝焼けの光を浴びていたら、いい年して少し泣けてきた。個室代をケチったばっかりに、こんなつらい目にあうなんて……。入院してから約1週間、ほとんど眠れてなかったせいで精神状態がやばかった模様。睡眠は本当に大事ですね。

朝食やら洗面・歯磨きなどを済ませ、主治医が来るのを今か今かと待ちわびる。今日は何としても退院しなければならない。このままだと入院中に体調を崩すという本末転倒なことになってしまう。

手持ちぶさたでストレッチしていたら、ようやく主治医チーム登場。「お待たせ~今からドレーン抜くから、そしたら退院していいよ」やった! 先生ありがとう!

処置室に移動して、ベッドに座った状態で、首につながっていたドレーンを抜いてもらう。皮膚の下で管が動くのがはっきりとわかった。傷跡を保護するテープを貼ってもらっておしまい。特に何をしたらダメということもないので、普通に過ごして大丈夫とのことだった。

そうと決まれば一刻も早く帰りたい。荷物は昨日のうちにだいたいまとめておいたので、あとは医療保険請求や退院の手続きなど事務的な手続きを残すのみだ。途中ナースステーションで私の診察カードが行方不明になったり、退院窓口で延々待たされたあげく「まだ請求書ができていないので後日振込用紙をお送りします」とか言われて脱力したりもしたが、この際もうどうでもいい。

タクシーに乗って病院をあとにした。入院するときはバタバタだったが、いざ退院するとなったらあっさりしたものだ。こうして1週間の入院生活が幕を閉じた。車窓を照らす初春の光が、ことのほかまぶしく感じられた。

入院6日目

またしても眠れない夜が明けた。

私としても眠れない状況に対してただ手をこまねいていたわけではない。自分としてはやれるだけのことはやったつもりだ。

・夜眠れないなら昼間寝ていればいいのでは?

昼間になると静かになるかというと、それは大間違いである。お隣さんは昼夜分け隔てなく唸ったり叫んだりしているし、採血やら何やらが合間合間にあるので長時間眠れるようなことはない。

・部屋にいないで静かな場所に行けば?

病棟には面会ルームがあり(現在は面会禁止)そこでテレビを見ることなどもできる。私も何回か行ってみたが、ノーマスクの患者さんたちがそこそこいることもあって、長居ははばかられた。

・耳栓したり音楽聴いたりすれば?

昼間はイヤホンで音楽を聴いていたが、さすがに寝るときはそうもいかない。ちなみに音楽を聴いていても余裕で叫び声は聞こえる。あともちろん耳栓は使っていたものの、どうしても耳にスッポリはまらないんですよ。動画とかめちゃくちゃ見たし、耳かきで押し込めばいいって見てわざわざ耳かき買いに行ったんだけどなあ。そんなわけでダメでした。

患者用の図書室に行ってみるも、コロナ禍のせいか、はたまた日曜だからか閉まっていた。屋上にも出られない。コンビニも全ての棚を見尽くすぐらいチェックした。それでもまだ時間があるので、ひたすら病院内を歩き回っていた。明日になれば退院できると、それだけを信じて。

入院5日目

悪い予感というのは当たるものである。

4人部屋に移ったその晩、案の定というかほとんど眠れなかった。お隣さんの唸り声はまだ何とかという感じなのだが、力の限りに絶叫されるとどうしても目が覚めてしまう。これはいつものことらしく、叫び声が響き渡ったところで看護師さんが駆けつけるわけでもない。看護師さんがどうにかできるものではないだろうけど。

主治医チームが休みということで、代わりに回診に来た医師に眠れないと訴えると、眠剤に安定剤をプラスされた。メンタル系のお薬、かなり気軽に出してもらえるんだなあ。ただし薬は手元に置いておけず、時間になると看護師さんが持ってきてくれて、目の前で飲む形になる。

そしてこの日からシャワーOKになった。嬉しいのだがひとつ疑問が。首からまだドレーンをぶら下げているのである。これはどうしたら?

「ビニール袋か何かかぶせて、濡れないようにすれば大丈夫ですよ」

看護師さんはあっさり言うものの、実際にはかなり難しかった。だってこんなの首から下げてるんですよ(以下ドレーンパックの写真を貼り付けます。血とか苦手な方は閲覧注意)

 

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お見苦しい画像失礼しました。さておき、ともかくシャワーは浴びたいので、まずは洗髪台でのシャンプーにトライ。やり方を間違えて、パジャマがビショビショになってしまった。シャワーカーテンの理屈と同じで、ケープを洗髪台の中に入れないといけないのね……

気を取り直してシャワー。ただでさえドレーンパックが邪魔なのに、首の傷も濡らさないようにしないといけなくて、やりづらいことこの上ない。ようやくシャワーが解禁になったのに、疲れにいったようなものだった。ちょっと残念。

これは何としても月曜日にドレーンを抜いてもらって退院するしかない……ビショビショのパジャマを身につけながら、固く心に誓ったのだった。

 

 

入院4日目

明けて3月4日、入院も4日目となった。

術後の歯科検診などもこなしつつ、私は4人部屋に移るのを今か今かと待ち構えていた。別に快適な個室が嫌なわけではないのだが、値段のことを考えると、あと1泊しろとか言われたらどうしようと気が気ではなかったのだ。

そして日も傾いてきた16:30頃、ようやく部屋を移れることになった。パジャマにスーツケースという、冷静に見たらおかしな姿で4人部屋に向かう。

聞いていた通り、ナースステーションのほぼ真正面の部屋だった。私の他はみなさん高齢の女性、そのうち2人は寝たきりのようだ。しかも私の隣の女性はずっと結構なボリュームの唸り声を上げており、ときおり何事かと思うほどの絶叫も交じる。なるほど、これでは看護師さんもオススメしないムードを出すわけだわ。

とはいえ他に選択肢もないので仕方ない。とりあえず6人部屋に比べればだいぶ開放感があるだけでもよしとする。

そして主治医チーム登場。「今日はここにいるんだね」と笑われる。毎日移動しているのだから無理もない。しかしここで希望の光が灯る。経過はすこぶる順調なので、週明けにドレーンが抜けたらそのまま退院していいということになったのだ。

月曜に退院できるなら、今日を含めてあと3日の我慢。それくらいなら何とか大丈夫だろうと己を奮い立たせる。しかし私の祖母もそうだったのだが、寝たきりの人は昼夜逆転になりがちである。夜はきっと寝られないんだろうなと、内心覚悟はしていた。